労働社会の安全弁

俥夫になる手続きは非常に簡単なものでした。寄留届さえ確実であれば、近所の人力車営業組合の事務所に行って非常に安価の手数料を出せば手続きをしてくれました。そして在籍区の警察署から借人力俥夫の免許証が下付され、同時に賃銭表と人力車借証明書を組合で渡してくれました。これだけで俥夫ができたのです。

その日の食事に困っている者にとって、容易に就業出来る人力車は大きな魅力として映ったのも無理はありません。

資本があまりかからず、手続きも簡単で体が丈夫であれば誰にでもでき、即現金が手に入る人力俥夫という仕事は、労働社会の安全弁の役割を果たしていたと言えます。